関越病院、透析患者の診療情報が入ったUSBメモリをユニフォームのポケットに入れたままクリーニング事業者へ — 翌日確認し5日後に返却
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日 | 2025年10月8日(クリーニング事業者への引き渡し) |
| 公表日 | 2025年12月15日 |
| 対象組織・業界 | 関越病院(運営: 新都市医療研究会〔関越〕会/医療機関) |
| 影響件数 | 公表されていない。透析外来に通院している患者の氏名、住所、生年月日、性別、診療情報 |
| 攻撃手法 | 攻撃なし。個人情報を含むUSBメモリをユニフォームのポケットに入れたまま、クリーニング事業者へ引き渡した |
| 情報源 | Security NEXT(2025年12月15日) |
新都市医療研究会〔関越〕会が運営する関越病院は2025年12月15日、職員が個人情報を含むUSBメモリをユニフォームのポケットに入れたままクリーニング事業者に引き渡す事故があったと公表しました。
引き渡しは2025年10月8日で、メモリには透析外来に通院している患者の氏名、住所、生年月日、性別、診療情報が保存されていました。件数は公表されていません。
翌10月9日にクリーニング事業者に確認したところ、同社で回収、保管していることが判明し、10月13日に返却されています。
同院は再発防止策として、すべてのUSBメモリについてパスワードによる保護を義務化するほか、持ち出しや返却時における管理表への記録・確認、職員を対象とした研修の実施を挙げています。
- 2025年10月8日: 職員が個人情報を含むUSBメモリをユニフォームのポケットに入れたまま、クリーニング事業者へ引き渡す
- 2025年10月9日: クリーニング事業者に確認したところ、同社で回収・保管していることが判明
- 2025年10月13日: USBメモリが返却される
- 2025年12月15日: 関越病院が公表。USBメモリのパスワード保護義務化、管理表への記録・確認、職員研修を再発防止策として示す
判明している事実: 個人情報を含むUSBメモリがユニフォームのポケットに入ったまま、クリーニング事業者に引き渡されたことです。メモリがパスワードで保護されていたかは公表されていません(再発防止策として「すべてのUSBメモリについてパスワードによる保護を義務化」を挙げていることから、当時は義務化されていなかったことが読み取れます)。
考えられる原因(推測)
Section titled “考えられる原因(推測)”再発防止策として同院が挙げた3項目が、そのまま事故前の状態を示しています。パスワード保護が義務化されておらず、持ち出しと返却の管理表もなかったことになります。
USBメモリがポケットに入ったままユニフォームが回収されたという経過は、メモリを白衣のポケットに常時入れて業務にあたる運用があったことを示唆します。透析外来の業務では、患者ごとの記録を扱いながら院内を移動する必要があり、記憶媒体を身につけて持ち歩くことは実務上の合理性を持ちます。
ユニフォームの回収は定期的な業務であり、着替えの際にポケットの中身を確認する手順がなければ、この事故は繰り返し発生し得る構造にあります。
組織が学ぶべきこと
Section titled “組織が学ぶべきこと”1. 記憶媒体の暗号化は、紛失を前提とした最後の防壁になる
Section titled “1. 記憶媒体の暗号化は、紛失を前提とした最後の防壁になる”今回はメモリが回収されましたが、それはクリーニング事業者が保管していたという偶然に依存しています。パスワードで保護されていれば、どこへ渡っても中身は読めません。同院が再発防止策の第一に義務化を挙げているとおり、この対策は持ち出しの管理よりも確実に働きます。
2. 診療情報を持ち歩く必要そのものを見直す
Section titled “2. 診療情報を持ち歩く必要そのものを見直す”透析外来の記録を扱う業務で、記憶媒体を身につける運用があったと考えられます。媒体に書き出さずに院内の端末から参照できる構成であれば、持ち歩く必要は生じません。持ち出しを管理するより、持ち出す理由をなくすほうが構造的です。
3. ユニフォームの回収は、ポケット確認を伴う工程として設計する
Section titled “3. ユニフォームの回収は、ポケット確認を伴う工程として設計する”着替えと回収は毎日発生する定型業務です。回収の前にポケットの中身を確認する手順を、個人の心がけではなく回収工程の一部として置くことで、同種の事故を防げます。
ヤグラの視点 — 報告のハードル:翌日の確認が、この事案の結末を決めた
Section titled “ヤグラの視点 — 報告のハードル:翌日の確認が、この事案の結末を決めた”10月8日にユニフォームを引き渡し、翌9日にクリーニング事業者へ確認し、13日に返却を受けています。診療情報を含む記憶媒体が組織の外に出た事案として、この時間の短さが結果を決めました。
注目すべきは、確認が「1日後」に行われている点です。USBメモリがポケットに入ったままだったことに気づいた人は、それを申告しなければなりませんでした。申告しなければ、事故は発生していないことになります。ユニフォームは回収され、洗濯され、メモリは破損して、後になって「あのデータが見つからない」という形でしか現れなかった可能性があります。翌日の確認が成立したのは、気づいた時点で言える状態にあったからです。
医療の現場でこの構造が重いのは、報告を躊躇う理由が具体的だからです。患者の診療情報を持ち出していたこと自体が規程に触れる可能性があり、申告は自分の運用の不備を明かすことになります。報告のハードルを下げる要素は、手段の単純さと、報告した人が不当に扱われないという見通しの二つです。不審なメールを1クリックで報告できる設計が組織内で効くのと同じ理屈が、自分のミスの申告にも当てはまります(→ PhishAI)。この事案が5日で終わったのは、その両方が機能していた結果です。
本件はUSBメモリが返却済みで、再発防止策も公表されています。追加公表の予定は示されていません。
- 参考: 保存されていた患者情報の件数は公表されていません
| 日時 | 内容 |
|---|---|
| 2026-08-12 | 2025年12月15日の公表内容をもとにアーカイブ記事として作成 |