東京都、都立高校の情報共有ツールで入試受験者291人と入学生321人の個人情報が閲覧可能に — 教員・生徒共有アカウントにパスワード未設定
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日 | 公表されていない。2025年10月10日に閲覧可能な状態であることが判明 |
| 公表日 | 2025年11月28日 |
| 対象組織・業界 | 東京都教育委員会(都内高校/教育・研究) |
| 影響件数 | 入試受験者291人分(氏名、性別、生年月日、出身中学校、受験成績)、2024年度入学生321人分(氏名、住所、性別、保護者氏名、電話番号など)。計612人分 |
| 攻撃手法 | 攻撃なし。教員と生徒が共有するアカウントで個人情報が保管され、パスワードも設定されていなかったことによる閲覧可能状態 |
| 情報源 | Security NEXT(2025年11月28日) |
東京都教育委員会は2025年11月28日、都内高校で教員や生徒が使用している情報共有ツールにおいて、本来公開すべきでない個人情報が閲覧できる状態になっていたと公表しました。状態が判明したのは2025年10月10日です。
対象となったのは、入試受験者291人分の氏名、性別、生年月日、出身中学校、受験成績と、2024年度入学生321人分の氏名、住所、性別、保護者氏名、電話番号などです。合計612人分にのぼります。
同校では教員と生徒共有のアカウントで個人情報を取り扱うことは禁止されていましたが、実際にはデータが保存されており、パスワードも設定されていませんでした。実際にデータを閲覧したのは、事象を報告した生徒のほか1人であることがログによって確認されており、外部への流出は確認されていません。対象データは削除され、全校集会と臨時保護者会で説明と謝罪が行われました。
- 保存された時期: 公表されていない
- 2025年10月10日: 情報共有ツール上で個人情報が閲覧できる状態であることが判明。生徒からの報告によるもの
- 判明後: 対象データを削除。閲覧者をログで特定(報告した生徒のほか1人)
- 2025年11月28日: 東京都教育委員会が公表。全校集会と臨時保護者会を開催し説明・謝罪
判明している事実: 教員と生徒が共有するアカウントで個人情報を取り扱うことは禁止されていたにもかかわらず、実際にはデータが保存されていました。加えてパスワードも設定されておらず、管理が不十分だったと公表されています。データが保存された経緯や、誰が保存したかは公表されていません。
考えられる原因(推測)
Section titled “考えられる原因(推測)”教員と生徒が同じアカウントを共有するという構成そのものが、事象の前提になっています。授業や課題の配布のために共有アカウントを用意し、そこに教員が業務ファイルを一時的に置いた——という流れが考えられます。「一時的に置く」という運用は記録に残らず、置いたまま忘れられたときに初めて問題として現れます。
受験成績と入学生の保護者情報という、性質の異なる2種類のデータが同じ場所にあったことは、この共有領域が業務ファイルの置き場として日常的に使われていた可能性を示唆します。禁止ルールが存在していたことは公表されているため、ルールの不在ではなく、ルールと実際の運用が乖離していた事案と整理できます。
組織が学ぶべきこと
Section titled “組織が学ぶべきこと”1. 「禁止している」ことと「できないようにしている」ことは別である
Section titled “1. 「禁止している」ことと「できないようにしている」ことは別である”この事案では、共有アカウントで個人情報を扱うことは明確に禁止されていました。それでもデータは置かれました。規程による禁止は、違反を検知する仕組みか、物理的に不可能にする仕組みのどちらかと組み合わせないと機能しません。個人情報を含むファイルを共有領域に置けないようにするか、置かれたことを検知して通知するかのいずれかが必要です。
2. 共有アカウントは「誰が何をしたか」を消してしまう
Section titled “2. 共有アカウントは「誰が何をしたか」を消してしまう”今回、閲覧者はログから2人と特定できましたが、それは閲覧側の記録が残っていたためです。教員と生徒が同一アカウントを使う構成では、ファイルを置いた側の行為を個人まで遡れません。共有が必要な相手が増えるほど、アカウントを共有するのではなく、個人アカウントに権限を付与する方式へ切り替える必要があります。
3. 入試データと在校生データは、保持期間を分けて管理する
Section titled “3. 入試データと在校生データは、保持期間を分けて管理する”受験成績は入試の判定が終われば業務上の役割を終えます。それが翌年度以降も共有領域に残っていたことが、対象件数を291人分押し上げました。業務のライフサイクルが終わったデータの削除時期を、データの種類ごとに決めておくことが、露出したときの規模を直接抑えます。
ヤグラの視点 — 訓練で防げた分岐点:ルールは知られていた。守れる構造になっていなかった
Section titled “ヤグラの視点 — 訓練で防げた分岐点:ルールは知られていた。守れる構造になっていなかった”この事案でまず目を引くのは、禁止ルールが事前に存在していたという事実です。「教員と生徒共有のアカウントで個人情報を取り扱うことは禁止」——方針としては正しく、周知もされていたはずです。それでも612人分のデータが置かれ、パスワードもかかっていませんでした。ルールを追加することでは解決しない類の問題がここにあります。
現場の側から見ると、共有アカウントは目の前の業務を進める最短経路です。生徒に資料を配る必要があり、共有領域がすでにあり、そこに置けば全員が見られる。禁止されていることを思い出す瞬間と、置けば業務が進む瞬間が競合したとき、後者が勝つというだけの話です。知識の不足ではなく、判断が必要になる場面が業務のなかに残っていたことが原因です。
だからこそ、有効な教育は「禁止事項の再周知」ではなく、判断を迫られる具体的な場面を体験させることにあります。今回のような「共有領域に業務ファイルを置きかけた瞬間」を訓練の題材にすれば、規程を読み上げるより実際の行動に届きます。最新の攻撃手口を反映したマルチチャネル型の訓練と同じ考え方で、内部の運用ミスも「知っている」から「その場でやらない」へ橋を架ける必要があります(→ ヤグラ アウェアネス)。
- データが共有領域に保存された経緯と、保存期間の特定
- 共有アカウント運用の見直しと、都立高校全体への点検の展開
- 再発防止策の公表内容
| 日時 | 内容 |
|---|---|
| 2026-08-12 | 2025年11月28日の公表内容をもとにアーカイブ記事として作成 |