東京都、職員採用試験のセミナー案内メールで申込者1人の氏名とログインIDが9,086人へ — 差し込み設定の漏れ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日 | 2025年12月12日 |
| 公表日 | 2025年12月25日 |
| 対象組織・業界 | 東京都(都職員採用試験/公共・非営利) |
| 影響件数 | 申込者1人の氏名と、都職員採用試験受験者サイトのログイン用ID。送信先は9,086人 |
| 攻撃手法 | 攻撃なし。メール送信機能で受信者ごとに氏名とIDを差し込む設定が行われていなかった |
| 情報源 | Security NEXT(2025年12月25日) |
東京都は2025年12月25日、都職員採用試験の受験者へメールでセミナーを案内した際、本文中に誤った個人情報が記載される不備があったと公表しました。
受験者サイトのメール送信機能において、受信者ごとに本人の氏名とIDが記載されるように設定する必要がありましたが、その設定が行われていませんでした。その結果、申込者1人の氏名と、都職員採用試験受験者サイトのログイン用IDが記載された状態で、9,086人へ送信されました。
発生は2025年12月12日で、複数の受信者から指摘があり問題が判明しています。同都は対象となるIDを削除し、個人情報が流出した受験者に経緯を説明して謝罪しました。メールの送信先に対しても謝罪し、削除を依頼しています。
- 2025年12月12日: 都職員採用試験の受験者9,086人へセミナー案内メールを送信。差し込み設定が行われておらず、申込者1人の氏名とログイン用IDが記載された状態で送られる
- 判明: 複数の受信者からの指摘による
- 対応: 対象となるIDを削除。情報が流出した受験者へ経緯を説明し謝罪。送信先へも謝罪しメールの削除を依頼
- 2025年12月25日: 東京都が公表
判明している事実: 受験者サイトのメール送信機能で、受信者ごとに本人の氏名とIDが記載されるように設定する必要があったが、設定が行われていなかったことです。設定が漏れた経緯や、送信前の確認手順の有無は公表されていません。
考えられる原因(推測)
Section titled “考えられる原因(推測)”差し込み機能は、設定しなくても送信自体は成立するという性質を持ちます。設定を忘れると送信がエラーになるのであれば、この事案は起きませんでした。実際には、差し込み欄に最初の1件の値が固定で入ったまま全員に送られています。失敗が送信の失敗として現れず、正常な送信として完了したことが、気づけなかった理由です。
送信者の手元でも、この状態は見えにくかったと考えられます。差し込みのプレビューを確認しなければ、本文のテンプレートには変数が入っているように見えます。送信後に自分宛のテストメールを確認する手順があれば発見できた性質の誤りです。
なお、記載されたのが氏名とログイン用IDという組み合わせである点は、他の誤送信と性格が異なります。ID単体では認証が完結しませんが、認証に使う値の片方が9,086人に渡ったことになります。
組織が学ぶべきこと
Section titled “組織が学ぶべきこと”1. 差し込み送信は、本番前に自分宛のテスト送信で確認する
Section titled “1. 差し込み送信は、本番前に自分宛のテスト送信で確認する”差し込み設定の漏れは、送信エラーにならないため気づけません。本番と同じ手順で自分宛に1通送り、差し込み部分が正しく置き換わっているかを目で見る——この一手順が、唯一の確実な確認方法です。
2. 認証に使う値を、通知メールの本文に載せない設計にする
Section titled “2. 認証に使う値を、通知メールの本文に載せない設計にする”今回流出したのはログイン用IDです。IDやパスワードといった認証に使う値を、メール本文に差し込む設計そのものを避けることで、この種の事故が認証情報の漏えいにつながらなくなります。サイトへのリンクだけを送り、認証は利用者自身に行わせる形にできます。
3. 大量送信の前に、送信対象数と本文の突き合わせを別の人が行う
Section titled “3. 大量送信の前に、送信対象数と本文の突き合わせを別の人が行う”9,086人への送信は、一度実行すれば取り消せません。送信規模が大きいほど、送信前に別の目を通す価値が上がります。送信ボタンの手前に確認者を置く運用は、コストに見合います。
ヤグラの視点 — 二次攻撃の連鎖を断つ:1人分の氏名とIDが、9,086人の受信箱に残った
Section titled “ヤグラの視点 — 二次攻撃の連鎖を断つ:1人分の氏名とIDが、9,086人の受信箱に残った”件数として数えれば、この事案の被害者は1人です。氏名とログイン用IDが記載された受験者が1人。それだけを見れば、記録に残す規模かどうか迷う事案に見えます。
しかしこの1人分の情報は、9,086人の受信箱に届いています。しかも受け取ったのは、同じ都職員採用試験の受験者です。同じサイトにログインする、同じ立場の人たちが9,086人。そこに、ある1人の氏名とログイン用IDが渡りました。認証はIDだけでは通りませんが、片方が既知になった状態は、残る片方を試す動機を作ります。
さらに、この事案そのものが次の攻撃の材料になり得ます。「東京都職員採用試験 セミナー案内」というメールが実際に届いた、という事実を9,086人が共有しています。同じ件名を騙る偽メールが後から届いたとき、心当たりがあるぶん疑われにくくなります。謝罪と削除依頼のメールが続けて送られていることも、正規の連絡が複数回来る状況を作ります。
だからこの種の事案への備えは、流出した件数ではなく、その後に来るなりすましを何分で止められるかで考える必要があります。受け取った側が不審なメールを1クリックで報告でき、報告されたメールをAIが数分で分析して同じものが誰に届いているかまで自動で調べられれば、二次波は最初の数件で止まります(→ PhishAI)。対象のIDを削除した対応は妥当ですが、名簿と文脈が外に出たという点は残ります。
- 差し込み設定が漏れた経緯
- 送信前の確認手順を含む再発防止策の公表内容
| 日時 | 内容 |
|---|---|
| 2026-08-17 | 2025年12月25日の公表内容をもとにアーカイブ記事として作成 |