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名古屋市、交通指導員が児童の登下校用名簿を紛失 — 氏名・クラスと「下校方面」が一体になった名簿

項目内容
発生日2026年4月22日(下校指導で名簿を携行)
判明日2026年4月23日
公表日2026年5月25日
対象組織・業界名古屋市(市立小学校。学校名は非公表)
事象交通指導員が携行していた児童の登下校用名簿(紙)の紛失
影響件数1校の1年生分(人数は非公表)
情報源Security NEXT(2026年5月25日)

名古屋市は2026年5月25日、市立小学校の下校指導にあたる交通指導員が、児童の登下校用名簿を紛失したことを公表しました。

対象は同校1年生分の名簿で、記載されていたのは児童のひらがな表記の氏名、クラス、下校方面です。人数は公表されていません。

指導員は2026年4月22日の下校指導の際にこの名簿を携行しており、翌4月23日に所在不明であることが判明しました。自宅や移動経路の捜索が行われましたが、名簿は発見されていません。

  • 2026年4月22日: 交通指導員が下校指導のため名簿を携行
  • 2026年4月23日: 名簿の所在不明が判明。自宅および移動経路を捜索したが発見できず
  • 対象児童の保護者に対し、経緯を説明する書面を送付
  • 2026年5月25日: 名古屋市が公表。交通指導員への研修と、個人情報の取り扱いに関する継続的な注意喚起を実施するとした

屋外での指導業務中に携行していた紙媒体の紛失であり、盗難や第三者による持ち出しを示す情報は公表されていません。現時点で情報が悪用された事実も報告されていません。

考えられる原因(推測): 下校指導は、交差点や通学路上で児童の列に合わせて移動し、車両の流れを見ながら誘導を行う業務です。名簿は「どの児童がどの方面に帰るか」を照合するために手元で開く必要があり、両手を使う誘導動作と、書類を持ち続ける動作が競合する場面が構造的に発生します。捜索範囲が「自宅や移動経路」に及んでいることからは、屋外の動線上のどこかで手を離れた可能性が考えられます。また、名簿が学校からその日限りの貸与ではなく、指導員が自宅を含む生活動線に持ち出せる状態にあったことも、紛失地点が特定できない一因になった可能性があります。いずれも推測であり、公表された事実は紛失の経緯までです。

1. 「氏名 × 下校方面」は、単独の氏名リストとは危険度が異なる

Section titled “1. 「氏名 × 下校方面」は、単独の氏名リストとは危険度が異なる”

この名簿に載っていたのは、ひらがな氏名・クラス・下校方面という3項目です。個人情報の項目数としては少なく、住所も電話番号も含まれていません。しかし「その子の名前を呼べる」情報と「その子がどの方向に帰るか」の情報が同じ紙の上で結びついている点は、児童の安全という観点で扱いが異なります。項目の少なさで機微度を測ると、この種の名簿は過小評価されます。

2. 業務に必要な最小単位まで、名簿を割る

Section titled “2. 業務に必要な最小単位まで、名簿を割る”

下校指導の現場で本当に必要なのは、多くの場合「今日この列に並んでいる児童が、正しい方面に向かっているか」の確認です。学年全体の名簿である必要はなく、方面別に分割された用紙であれば、1枚の紛失で失われる範囲は大きく縮みます。氏名をひらがな全表記にせず、児童本人が識別できる範囲の記号や出席番号に置き換えられる帳票もあります。様式をどう割るかは、そのまま紛失時の被害設計です。

3. 携行物を「その日のうちに学校へ戻す」運用にする

Section titled “3. 携行物を「その日のうちに学校へ戻す」運用にする”

本件では自宅や移動経路まで捜索が行われています。裏を返せば、名簿が指導終了後も指導員の手元に残る運用だったことになります。指導終了時に定位置へ返却する運用であれば、紛失の発生地点は下校ルート上に限定され、捜索も、いつ失われたかの特定も容易になります。

ヤグラの視点 — 役職別・部門別のリアリティ:ルールが届いていない層に、ルールは効かない

Section titled “ヤグラの視点 — 役職別・部門別のリアリティ:ルールが届いていない層に、ルールは効かない”

屋外で紙を落とすことを技術で止める手段はなく、ここで書けるのは帳票設計と、教育をどの層に届けるかという話に限られます。

そのうえで、この事案が示しているのは「個人情報を扱う人」と「情報セキュリティ研修を受けている人」が同じ集合ではないという、多くの組織に共通する構造です。交通指導員は学校の教職員ではなく、地域の担い手として下校指導を担う立場にあります。しかし業務上は、児童の氏名と下校方面という、教職員が扱うものと同等以上に慎重さを要する情報を手にしています。

組織の情報セキュリティ教育は、たいてい正規職員を単位に設計されます。その結果、業務委託、指定管理者、地域ボランティア、非常勤といった「組織図の外側にいるが、現場では情報の最前線にいる層」が、研修の設計対象から外れることが起きます。名古屋市が再発防止策として「交通指導員に対する研修」を挙げているのは、まさにこの層への到達を課題として認識したためと読めます。

重要なのは、この層に届ける内容が、職員向けの研修をそのまま流用したものであってはならない点です。パスワード管理やメールの取り扱いを説明しても、屋外で名簿を携行する業務の現実には接続しません。その人の一日の動作のなかで、情報が最も無防備になる瞬間はどこかを、業務ごとに書き下ろすこと。画一的な教材を全員に配る運用は、受講率だけが上がり、現場の判断は何も変わりません。

名簿は発見されておらず、名古屋市は対象児童の保護者への書面による説明を実施済みです。今後、交通指導員への研修と個人情報の取り扱いに関する注意喚起が継続されます。情報の悪用が確認された場合の追加公表が想定されます。

日時内容
2026-05-25初稿公開(公表日時点)