京都府、複合機に残った書類が府営住宅の募集案内書に混入 — 25カ所で配布、2部は回収不能
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日 | 2026年5月27日〜29日(配布期間) |
| 発覚日 | 2026年5月29日 |
| 公表日 | 2026年6月24日 |
| 対象組織・業界 | 京都府/自治体 |
| 事象 | 複合機の排紙トレイに残った個人情報を含む書類が、配布物に混入 |
| 情報源 | Security NEXT(2026年6月24日) |
京都府は2026年6月24日、府営住宅の募集案内書に個人情報を含む書類が混入した状態で配布されたことを公表しました。個人情報を含む文書を印刷した際、複合機の排紙トレイから回収されないまま募集案内書に混入したものです。
混入していたのは身体障害者障害程度審査票1人分(氏名、年齢、障害区分、等級、障害の状態などを含む)と、障害者団体補助金の確定に関連する文書(1団体の代表者氏名が記載)です。募集案内書は南丹市以南の市の福祉事務所や府保健所、府住宅供給公社へ郵送され、府庁など25カ所に配架されました。配架した154部のうち46部に混入しており、うち2部は府民が持ち帰ったと推定されています。
- 2026年5月27日〜29日: 府営住宅の募集案内書を、南丹市以南の市の福祉事務所・府保健所・府住宅供給公社へ郵送、および府庁など25カ所に配架
- 2026年5月29日: 混入が発覚
- 郵送先に連絡し、配布を停止して回収を実施。配架154部のうち混入していた46部について、44部を回収。残る2部は府民が持ち帰ったと推定
- 個人情報が流出した人に説明と謝罪を実施
- 2026年6月24日: 公表
京都府は「個人情報を含む文書を印刷したが、複合機の排紙トレイから回収されないまま、募集案内書に混入した」と説明しています。印刷物の放置と、配布物の封入・配架前確認の不備が重なった結果です。
考えられる原因(推測): 共用複合機では、印刷を実行してから受け取りに行くまでに時間差が生じ、その間に別の印刷物と重なることがあります。本件で要配慮個人情報に相当する障害程度審査票が対象になっている点からは、機微な文書についても共用機で印刷する運用が一般的に行われていた可能性が考えられます。また、混入が154部中46部という広がりを見せていることからは、トレイから束ごと持ち上げた紙を、そのまま募集案内書の配布用の束として扱った可能性が推測されます。いずれも推測であり、公表された事実は混入経路の説明までです。
組織が学ぶべきこと
Section titled “組織が学ぶべきこと”1. 共用複合機は「一時的に無人になる情報の置き場」である
Section titled “1. 共用複合機は「一時的に無人になる情報の置き場」である”排紙トレイは、印刷を実行した人が取りに来るまでの間、誰でも手に取れる場所に文書が置かれる構造をしています。ここに要配慮個人情報が置かれる運用が許容されている限り、混入・持ち去り・のぞき見のいずれもが確率的に起こります。多くの複合機には認証印刷(プリントリリース)機能があり、利用者が機器の前でカードやPINで認証するまで出力されない設定にできます。機微文書を扱う部署では、設定1つで排紙トレイの滞留時間をゼロにできる余地があります。
2. 配布物の「部数と中身」を突き合わせる工程が抜けやすい
Section titled “2. 配布物の「部数と中身」を突き合わせる工程が抜けやすい”配布物の準備は、内容の正しさ(案内書の記載内容)は入念に確認される一方、束の物理的な構成(何枚組か、余計な紙が挟まっていないか)は確認対象から外れがちです。本件は154部中46部という高い比率で混入しており、束ごとに確認する工程が存在しなかったことを示唆します。ページ数が固定された配布物であれば、抜き取り検査ではなく全部数の枚数確認が現実的なチェックになります。
3. 「回収できなかった2部」が最終的な被害を定義する
Section titled “3. 「回収できなかった2部」が最終的な被害を定義する”京都府は44部を回収し、2部は府民が持ち帰ったと推定しています。紙の配布物は、渡ってしまえば削除依頼が効きません。デジタルの誤送信では「送信先に削除を依頼して確認する」という着地がありますが、匿名の来庁者が持ち帰った紙にはそれがない。回収可能性の観点では、紙の不特定配布は誤送信より重いという認識が必要です。
ヤグラの視点 — 攻撃者のいないインシデント:紙の工程に潜む「意図しない公開」
Section titled “ヤグラの視点 — 攻撃者のいないインシデント:紙の工程に潜む「意図しない公開」”侵入者はおらず、システムの脆弱性も認証の突破もありません。起きたのは、複合機のトレイに残った紙が別の配布物に紛れ込み、25カ所の窓口を経由して不特定の府民に渡ったという、完全に物理的な事象です。
それでも、この事案をアーカイブに残す意味があります。「攻撃者のいないインシデント」は、攻撃を伴う侵害と同じ量の個人情報を、はるかに低いコストで漏えいさせるからです。クラウドストレージの公開設定ミス、アクセス権限の付け忘れ、フォームの設定不備——ヤグラのインシデント記事でも繰り返し登場するこの類型は、共通して「誰も攻撃していないのに情報が外に出ている」構造を持ちます。本件はその紙版です。
そして、この類型に固有の難しさは「起きたことに気づく契機が外部からしか来ない」点にあります。攻撃であればログに痕跡が残り、監視の対象になります。トレイに残った紙が配布物に混ざったことは、どこにも記録されません。本件が5月29日という配布期間中に発覚し、44部を回収できたのは幸運な側面があり、発覚が数ヶ月後であれば全部数が府民の手元に渡っていたはずです。
したがって、この類型に対する組織の備えは監視ではなく工程設計にあります。機微文書の印刷を認証印刷に限定する、配布物の準備と機微文書の印刷を同じ機器・同じ時間帯で行わない、束の枚数確認を配架前の必須工程にする。攻撃者がいない事案は、技術で検知するのではなく、そもそも発生しない手順に置き換えるしかありません。
回収できなかった2部について、京都府は府民が持ち帰ったと推定しています。個人情報が流出した対象者への説明と謝罪は実施済みで、再発防止策の詳細について続報が想定されます。
| 日時 | 内容 |
|---|---|
| 2026-06-24 | 初稿公開(公表日時点) |