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海老名市、金融機関からの資産調査回答書を紛失した職員が発見報告を偽造 — 停職1カ月の懲戒処分

項目内容
発生日2026年度中(引き継ぎ時に発覚)
対象組織・業界神奈川県海老名市(地方自治体)
攻撃手法資産調査回答書の紛失+隠蔽のための文書偽造(内部不正)
情報源Security NEXT(2026年7月8日)

神奈川県海老名市は2026年7月8日、生活保護受給審査などに用いる11金融機関分の資産調査回答書を紛失した職員が、紛失の事実を隠蔽するため「回答書を発見した」との虚偽報告を含む文書を偽造していたことを公表しました。

紛失は2026年度中に他職員への事務引き継ぎ時に発覚。市は該当職員に停職1カ月(6月19日付)の懲戒処分を、管理監督責任者2名に文書訓告を実施しました。市は「信用を著しく毀損する行為」として厳しく処分しています。

  • 2026年度中: 職員が業務で受領した11金融機関分の資産調査回答書を紛失
  • 同時期: 紛失を隠蔽するため「回答書を発見した」との虚偽内容を含む文書を偽造
  • 2026年度中の別時点: 他職員への事務引き継ぎ時に紛失(および偽造)が判明
  • 2026年6月19日: 該当職員に停職1カ月の懲戒処分を実施
  • 2026年7月8日: 市が公表

紛失自体の直接原因(保管方法・受領後の管理体制)は詳しく公表されていません。むしろ本件で重要なのは、紛失の後に「隠蔽のための文書偽造」が上乗せされたという構造です。

考えられる原因(推測): 紛失を上司に報告した場合の心理的コスト(叱責・査定への影響・書類再取得の手間)が、偽造の心理的コスト(文書偽造という重大な違反行為)を上回ってしまう状況にあったと推測されます。個人の倫理感の問題であると同時に、「紛失を早期に報告できる組織文化・仕組み」が欠如していた可能性が考えられます。

1. 「紛失」と「隠蔽」は別事案として扱う

Section titled “1. 「紛失」と「隠蔽」は別事案として扱う”

本件は「資産調査回答書の紛失」と「隠蔽のための文書偽造」の2つのインシデントが重なった事案です。前者は個人情報保護の問題、後者は公文書偽造という重大な倫理・法令違反の問題であり、後者の方が組織への信用毀損としては深刻です。紛失事案の再発防止策と、隠蔽・虚偽報告への抑止策は別々に設計する必要があります

2. 生活保護受給審査データの機微性

Section titled “2. 生活保護受給審査データの機微性”

紛失した資産調査回答書は、生活保護受給審査などに使われる金融機関からの回答であり、受給申請者の口座情報や資産状況という極めて機微な個人情報を含みます。件数は公表されていませんが、11金融機関にわたる情報の紛失であり、対象個人への通知・謝罪をどう設計するかが問われます。

「紛失していた書類を発見した」という報告は、性質上、後から検証が困難です。今回は引き継ぎで発覚しましたが、発見報告そのものに第三者の確認・現物照合を必須にする運用ルールがあれば、偽造は成立しにくくなります。書類の物理的な所在を紐づける台帳運用や、上長の物理確認をチェックポイントに組み込むといった予防策が有効です。

ヤグラの視点 — 訓練で防げた分岐点:「紛失を隠す」より「早く報告する」を体験させる

Section titled “ヤグラの視点 — 訓練で防げた分岐点:「紛失を隠す」より「早く報告する」を体験させる”

本件で最も深刻なのは、紛失そのものではなく、「紛失を報告する」よりも「偽造して隠す」が選ばれてしまった意思決定の方です。この分岐点は、知識として「紛失時は速やかに報告」を知っているだけでは越えられません。実際に紛失してしまった瞬間、頭に浮かぶのは「叱責されるかもしれない」「査定に響くかもしれない」「探せば見つかるかもしれない」——という現実的な計算です。

知識と体験のギャップを埋めるには、報告した人がどう扱われるかを組織として明確にする必要があります。「紛失自体は起こりうる、正直に報告した人は責めない、隠蔽した場合こそ厳罰」という原則を、口頭でなく訓練シナリオとして体験させることが有効です。ヤグラの アウェアネス は、フィッシングクリック等の失敗を「叱る」対象ではなく、「素早く報告する」行動へと接続する運用設計を支援します。KPIをクリック率ではなく報告率に置き、報告した人にAIが即時フィードバックを返すことで、「報告すれば助けが来る」体験を積み上げる仕組みが、隠蔽の連鎖を止める土壌になります。

海老名市は該当職員への懲戒処分と管理監督者の文書訓告を実施済みですが、資産調査回答書の対象となった個人への通知・謝罪の方針、および再発防止策(保管体制・報告文化の強化)についての続報が注視されます。

日時内容
2026-08-03初稿公開(7月8日の初報を基に、アーカイブ用に整理)