北海道大学大学院情報科学研究院、研究室に侵入した第三者が認証済みのPCから学生106人分のファイルを持ち去った可能性
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日 | 2025年10月6日夜 |
| 公表日 | 2025年12月9日 |
| 対象組織・業界 | 北海道大学 大学院情報科学研究院(教育・研究) |
| 影響件数 | 5研究室に所属歴がある学生あわせて106人分の氏名、卒業年度、学位、就職先会社名 |
| 攻撃手法 | 第三者が研究室に物理的に侵入し、ユーザー認証された状態で離席中のパソコンを不正に操作。共有ファイルのダウンロードとUSBメモリ接続の形跡が確認された |
| 情報源 | Security NEXT(2025年12月9日) |
北海道大学は2025年12月9日、大学院情報科学研究院の研究室に第三者が侵入してパソコンを不正に操作し、個人情報を含むファイルを持ち去った可能性があると公表しました。
2025年10月6日夜、所属などがわからない学生風の人物が研究室内のパソコンを操作しているところを学生が発見しました。翌7日以降の調査で、研究室内で共有していたファイルがダウンロードされ、USBメモリが接続された形跡が確認されています。
操作された端末は、使用者がプログラムを実行していたところで、ユーザー認証された状態で離席中でした。対象となったのは5研究室に所属歴がある学生あわせて106人分の氏名、卒業年度、学位、就職先会社名です。
- 2025年10月6日夜: 所属などがわからない学生風の人物が研究室内のパソコンを操作しているところを、学生が発見
- 2025年10月7日以降: 調査を実施。研究室内で共有していたファイルのダウンロードと、USBメモリ接続の形跡を確認
- 2025年12月9日: 北海道大学が公表
判明している事実: 操作された端末は、使用者がプログラムを実行していたところで、ユーザー認証された状態で離席中でした。侵入した人物の身元、研究室への立ち入りが可能だった経緯、実際にUSBメモリへ書き出されたファイルの内容は公表されていません。
考えられる原因(推測)
Section titled “考えられる原因(推測)”「所属などわからない学生風の人物」という記述から、研究室が施錠されておらず、学内であれば誰でも立ち入れる状態にあった可能性が考えられます。大学の研究室は、学生・院生・共同研究者が随時出入りする性質があり、居室の施錠を厳格に運用すると研究活動が滞るという事情があります。
情報を持ち去るために脆弱性も認証情報も必要とされていない点が、この事案の核心です。認証を突破する必要がなかった——認証はすでに通っていました。プログラムの実行中はログアウトも画面ロックも避けたくなる場面であり、自動ロックの設定を外していた、あるいは長い待ち時間に設定していたことが考えられます。
対象が「5研究室に所属歴がある学生」に及んでいることから、共有ファイルは研究室単位ではなく研究院内の複数研究室が参照できる領域に置かれていたと考えられます。就職先会社名を含む名簿であれば、進路指導や同窓の連絡のために作られたものと推測されます。
組織が学ぶべきこと
Section titled “組織が学ぶべきこと”1. 物理的な立ち入りは、認証を無意味にする
Section titled “1. 物理的な立ち入りは、認証を無意味にする”この事案では、脆弱性も盗まれた認証情報も使われていません。認証済みの端末の前に座れたという一点で、権限のあるユーザーとまったく同じ操作が可能になりました。ネットワーク側の対策をどれだけ積んでも、端末の前に第三者が座れる状態では意味を持ちません。居室の施錠と、離席時の画面ロックは、その最終防衛線です。
2. 自動ロックは「業務が止まらない設定」と両立させる
Section titled “2. 自動ロックは「業務が止まらない設定」と両立させる”プログラムの実行中に画面をロックしたくないという事情は現実的です。しかし画面ロックは実行中の処理を止めません。ロックと処理継続が両立することを明示的に周知するだけで、ロックを避ける理由の多くは消えます。
3. 共有領域の参照範囲を、研究室単位まで絞る
Section titled “3. 共有領域の参照範囲を、研究室単位まで絞る”対象が5研究室分に及んだのは、共有ファイルが研究院内で広く参照できる場所に置かれていたためと考えられます。1台の端末が侵害されたときに何が見えるかは、その端末から到達できる共有領域の広さで決まります。参照範囲を必要な単位まで絞ることが、被害の上限を直接下げます。
ヤグラの視点 — 訓練で防げた分岐点:この事案の全体は「離席時にロックしていなかった」に収まる
Section titled “ヤグラの視点 — 訓練で防げた分岐点:この事案の全体は「離席時にロックしていなかった」に収まる”この事案で失われたのは学生106人分の情報で、使われた手段は研究室に入って、認証済みの端末を操作することだけでした。マルウェアもフィッシングも脆弱性も介在していません。原因として公表されているのは、「使用者がプログラムを実行していたところで、ユーザー認証された状態で離席中」だったという一文です。
離席時に画面をロックすべきだということを、情報科学研究院の関係者が知らないはずはありません。知識の不足ではなく、その瞬間に実行されなかったというだけの話です。プログラムを走らせている最中で、少し席を外すだけで、部屋には見慣れた顔しかいないはずだった——ロックしない理由はいつも具体的で、ロックする理由はいつも抽象的です。この非対称が、規程の周知では埋まらない部分をつくります。
だからこそ、この類型に効く教育は「離席時はロックする」という項目の再確認ではありません。その具体的な場面を体験させることです。実行中の処理を抱えて席を立つときに何が起こり得るのか、ロックしても処理は止まらないという事実を、実際の作業の文脈のなかで示す。攻撃手口を反映したシナリオで訓練を組むのと同じ考え方で、内部の運用も「知っている」から「その場でやる」へ橋を架ける必要があります(→ ヤグラ アウェアネス)。106人分の情報と、画面ロック1回の距離は、それだけしかありません。
- 侵入した人物の特定と、警察への届出の有無
- USBメモリへ実際に書き出されたファイルの特定
- 研究室の施錠および共有領域の参照範囲を含む再発防止策の公表内容
| 日時 | 内容 |
|---|---|
| 2026-08-12 | 2025年12月9日の公表内容をもとにアーカイブ記事として作成 |