恐喝グループが犯行を主張、クラウドDB「TiDB」のPingCAPからソースコードなど流出
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生・公表日 | 不正アクセス: 2026年9月9日〜10月7日(米国時間) / 認識: 10月7日 / 公表: 10月19日(英語版)、10月21日(日本語版) |
| 対象組織・業界 | PingCAP(分散データベース「TiDB」の開発・提供)、日本法人のPingCAP株式会社(東京都千代田区) / 情報通信・IT |
| 影響件数 | 国内の個人情報 最大約5万件(日本法人の発表) |
| 対象情報 | ソースコード、TiDB Cloudのアカウント情報、SQLエディタの実行履歴、顧客の連絡先・契約条件、APIキーのPublic Key部分(暗号化済み) |
| 攻撃手法 | 盗まれたサービスアカウントの認証情報による、社内システムへの不正アクセス |
| 犯行の主張 | 恐喝グループのFulcrumSecが10月19日に主張(PingCAPの発表は攻撃者の名前に触れていない) |
| 情報源 | PingCAP「Security Update」(英語、2026年10月19日) / PingCAP株式会社「不正アクセスによる情報漏洩に関するお詫びとご報告」(2026年10月21日) |
分散データベース「TiDB」を提供するPingCAPは2026年10月19日(米国時間)、社内システムへの不正アクセスを公表しました。日本法人のPingCAP株式会社も10月21日、日本語で報告を出しています。
同社によると、第三者が盗んだサービスアカウントの認証情報を使い、社内システムに入りました。データを複製し、ソースコードも取得しています。認証情報が盗まれた経緯は公表されていません。
恐喝グループのFulcrumSecは10月19日、PingCAPからデータを盗んだと主張しました(Hackmanac)。PingCAPの発表は、攻撃者の名前を挙げていません。
日本法人は、国内で最大約5万件の個人情報が漏えいしたと説明しています。持ち出しが確認された情報は次のとおりです。該当する項目は顧客ごとに異なります。
- TiDB Cloudのユーザー名・メールアドレス
- 組織・プロジェクトの関連付け
- SQLエディタの実行履歴とエラー情報(組織・プロジェクト・クラスタのIDを含む)
- 顧客の連絡先(氏名・メールアドレス・企業名・電話番号)
- 契約条件(注文内容・支払い条件・請求設定)
- TiDB Cloud APIキーのPublic Key部分(暗号化済み)
侵入先は社内システムで、同社と外部の調査機関はTiDB Cloudへの不正アクセスを確認していません。クレジットカード情報の流出も確認されていません。TiDBに保存されたデータが影響を受けた証拠もないとしています。
TiDBとTiDB Cloud
Section titled “TiDBとTiDB Cloud”TiDBは、MySQL互換の分散データベースです。オープンソースで公開されており、利用者が自社の環境で動かすこともできます。TiDB Cloudは、TiDBをPingCAPが運用するフルマネージドのクラウドサービスです。AWS・Google Cloud・Microsoft Azureなどの上で提供されています。
TiDB Cloudの管理画面には、ブラウザからSQLを実行できるSQLエディタがあります。PingCAPは、全世界で4,000社以上がTiDBを導入していると説明しています。
- 2026年9月9日〜10月7日(米国時間): 盗まれた認証情報で社内システムにアクセスされる
- 10月7日: PingCAPが認識し、同日中に認証情報の無効化を開始
- 10月10日まで: 追加の認証情報を削除し、クラウドのプロジェクト間の過剰な権限を解除
- 10月12〜13日: 外部の調査会社が脆弱性4件を報告。14日までに修正し、再テストで確認
- 10月14日: 特定した認証情報をすべて無効化し、不正アクセスの経路を遮断
- 10月19日: FulcrumSecを名乗るグループが、PingCAPからデータを盗んだと主張
- 10月19日(米国時間): PingCAPが英語で公表
- 10月21日(日本時間): 日本法人が日本語で公表。法執行機関と各国の監督当局には報告済み
犯行を主張するFulcrumSec
Section titled “犯行を主張するFulcrumSec”グループが主張するデータの規模や中身に、PingCAPの発表は触れていません。サポート資料に認証情報が含まれていたという主張は、未検証としています。
どんなグループか
Section titled “どんなグループか”FulcrumSecは、2025年秋ごろから活動しているデータ恐喝グループです(ロイター通信)。ファイルの暗号化は行いません。盗んだデータを公開すると予告して、金銭を要求するとされています(Security Affairs)。
米国の安全保障メディアLawfareの分析(2026年7月)によると、グループは25の組織に侵入したと主張しています。これまでの事案では、外部に露出した認証情報を入り口にしてきました。プログラムに書き込まれた認証情報や、設定に誤りのあるクラウドストレージも使われています(Lawfare)。
同じ分析によると、グループがAIを主に使うのは、データを盗んだ後です。盗んだデータをAIで読み込み、何を持っているかと要求額の根拠を被害組織に示します。記者や研究者向けにロゴ入りの報告書を作り、世間の注目を圧力に変えることもあります。被害組織から盗んだOpenAIのAPIキーで、その組織のデータを要約させたとも報じられています。
これまでの主な事案
Section titled “これまでの主な事案”報じられた主な事案は次のとおりです。
| 時期 | 組織 | 報じられた内容 |
|---|---|---|
| 2025年秋 | Avnet(米国・電子部品商社) | 侵入の詳しい報告書をグループ自ら作り、情報発信者に提供 |
| 2026年6月 | ノボ ノルディスク(デンマーク・製薬) | 同社が社内システムへの不正アクセスを公表。グループは2,500万ドルを要求し、データを公開 |
| 2026年9月 | Dustin(スウェーデン・IT機器販売) | グループが侵入を主張し、データを公開(Ingeniøren) |
利用者に考えられる影響
Section titled “利用者に考えられる影響”利用者への影響は、持ち出しが確認された記録の中身から考えられます。
ひとつは、PingCAPを装ったメールです。連絡先と契約条件が漏えいしたため、実際の取引に沿った文面が作れると考えられます。日本法人も、同社を装うメールへの注意を呼びかけています。同社がメールでパスワードやアクセスキーを尋ねることはないとしています。
もうひとつは、SQLエディタに入力した内容です。クエリにパスワードや個人情報をそのまま書いていた場合、その値も実行履歴に含まれていたと考えられます。
APIキーについて、日本法人はPrivate Key部分は流出していないと説明しています。Public Key部分だけではTiDB Cloudを操作できないとしています。英語版の発表は、ほかに使える認証情報が露出したかを調査中としています。
TiDB Cloudを使っている組織は、日本法人が求める次の対応を進める必要があります。
- APIキーのローテーション
- TiDB Cloudと関連するクラウドアカウントのアクセスログの確認
- 組織メンバーとロール(権限)の見直し
加えて、SQLエディタで実行したクエリに、パスワードやトークンを書いたものがないかを確認します。見つかった場合は、その値を変更します。変更すれば、持ち出された履歴に残った古い値では入れなくなります。問い合わせは、日本法人のインシデント対応窓口(security-jp@pingcap.com)で受け付けています。
- 顧客ごとの影響範囲の確定と、対象顧客への個別の通知
- 修正前の脆弱性が悪用されていたかの確認
- ほかに使える認証情報が露出していないかの調査
PingCAPは、新たな事実が分かり次第、発表を更新するとしています。本記事も、判明次第追記します。
| 日時 | 内容 |
|---|---|
| 2026-10-21 | 第一報を公開 |